こんにちは!まんたです。
今回はヘアースプレーを用いたチッピング技法、「ヘアスプレー技法」または「ケープ剥がし」の使い方をご紹介していきます。
使い方さえ覚えてしまえば手軽にリアルなチッピングを施すことができるとても便利な技法になっています。
それではご紹介していきます。
用意するもの
今回用意する物はこちら。
ヘアスプレー

まずはこの技法に欠かせないヘアスプレーです。
代表的な物にケープがありますが、今回はよく使用されているケープスーパーハードを使います。
以前はケープナチュラル&キープを使用していましたが、剥がれ方に大きな違いは見られませんでした。
なので、どのヘアスプレーを使用するかはお好みで選んでいただいて構いませんが、成分の違いによって仕上がりが違ってくる可能性があります。ご了承ください。
下地塗装について
下地塗装の塗料はお好みで選んでいただいて構いませんが、塗膜の強いラッカー塗料などを用いることをおすすめします。
下地塗装の塗膜が弱いと、いざ剥がす時に成形色まで剥がれてしまったということもあり得ます。

今回はガイアカラーのラッカー塗料、ジャーマングレーを使用します。
ガイアカラーのラッカー塗料は何となく気に入っています。
基本塗装の塗料
下地塗装の上に重ねる基本塗装の塗料ですが、ここがこの技法の肝となる部分で、できるだけ塗膜が弱く隠蔽率が高いものを使用してください。
塗膜の弱さは剥がしやすさに直結する重要なポイントなので、塗膜が弱くて重ね塗りをあまりしなくても発色してくれるような塗料が好ましいのです。

そこでおすすめするのがタミヤアクリルです。
この塗料は比較的塗膜が弱いうえに隠蔽率も高めで、この技法に使う塗料としては最適です。
今回はこれを水(水道水)で希釈して塗装します。
専用溶剤ではなく水を使うことで塗膜の強さを多少抑えることができるからです。
また、タミヤアクリルのAFV用カラーはつや消し塗料が多いですが、つや消し塗料を基本塗装に使ってしまうと、その後のウェザリングで油彩などのウェザリング塗料がこびりついて取れなくなってしまうことがあります。
なので、僕は毎回光沢塗料をそれっぽい色に調色して使用していますが、この部分はお好みに合わせて試行錯誤していただけたらと思います。
剥がしツール
最後に剥がしツールですが、特別な道具は必要ありません。

今回用意したのはヘアスプレー層をふやかす為の水と、剥がす為の筆とケガキ針だけです。
水は基本塗装同様水道水で構いません。
筆は特にこれがいいということはありませんが、細かい表現には面相筆があった方が楽です。
また、穂先がかなり固めの筆(歯ブラシなどでも可)も用意しておくと便利かもしれません。
僕は百均のナイロン筆の穂先を切り取って使っていますが、中々使えます。
ケガキ針は主にひっかき傷用で、つまようじやピンセット、または裁縫針などでも代用ができるでしょう。
1.下地、ヘアスプレー塗装
それでは実践していきます。
なお、下地塗装も基本塗装もエアブラシでの塗装になります。
筆塗りやスプレー缶塗装でこの技法が使えるかどうかは不明ですのでご了承ください。
下地塗装
始めに下地塗装をしておきます。

ガイアラッカーのジャーマングレーを塗装。
剥がす際に下地塗装まで剥がれて成形色がのぞいてしまった、なんてことが無いように塗膜厚めでしっかり塗っておきましょう。
下地塗装の色は基本塗装に対してある程度暗めの方が剥がしたときに目立ちやすいです。
ヘアスプレーの塗装
ここでヘアスプレーを塗装します。

ヘアスプレーは先ほど紹介したケープスーパーハードを使用します。
本来模型用の塗料ではありませんが、一缶数百円の割に大容量なのでコスパがすごいです。
僕の場合、たっぷり使っても五作品以上は使い回すことができます。
それでは塗装していきます。

塗装する際の注意点ですが、吹き始めと吹き終わりの塗料が模型に当たらないように塗装してください。

吹き始めと吹き終わりはスプレー圧が均一でなく塗料の量もまちまちなので、箇所によってムラができてしまうからです。
上の写真で言うと赤い円の辺りから吹き始めて、

スッとスプレーを移動させて砲塔に塗料が当たらなくなったところ(赤い円の辺り)で吹き終わらせます。

また、ケープの場合塗料の勢いがかなり強いので対象から30cm程離して塗装してください。
ヘアスプレー塗装は厚すぎず薄すぎずのバランスがとても重要になってきます。
厚すぎると上の塗装がひび割れを起こし、薄すぎると剥がすことができなくなるのでこの工程ではなるべく失敗が無いように慎重に進めてください。

この手順でヘアスプレーを全体に二回塗装し、ヘアスプレー塗装は完了です。
二度塗りすることでムラが無く程よい厚さのヘアスプレー層を作ることができます。
補足として、全体に一度目を塗り終わったら数十秒ほど乾燥させて二度目を塗ることで、塗装のムラを最小限に抑えられます。
また、ヘアスプレーを塗ったままの状態で放置しても、数日程度ならその後に基本塗装を塗っても問題なく剥がせますが、それ以上の日数は試していないので不明です。
2.基本塗装
ここから基本塗装です。
先ほどのヘアスプレー塗装同様、かなり重要な工程なので慎重に進めてください。
塗料の希釈
調色したタミヤアクリルを水で希釈します。
先ほども書きましたが、希釈に使用する水は水道水で構いません。

このとき塗料と水の比率は1:1になるように調整してください。
この比率が濃すぎず薄すぎずの濃度になります。
あまり細かく量る必要はありませんが、適当過ぎると塗装の際に塗膜が厚くなったり水滴が浮いてきたりします。ご注意ください。
基本塗装
基本塗装はとにかく塗膜が厚くなり過ぎないようにに注意してください。
ヘアスプレーをキレイに塗れていてもここで失敗したら台無しになってしまいます。
一度塗りで終わらせるより、少し塗っては乾かしを繰り返して二、三度塗りにした方が塗膜は厚くなりにくいです。

とはいえ、タミヤアクリルは重ね塗りをしなくてもよく発色してくれるのであまり神経質にならなくても大丈夫です。
もう一つ注意点として、タミヤアクリルは比較的エアブラシに詰まりやすいです。
塗料をカップに入れたまま放置というこは極力避け、使用後も定期的に手入れすることをおすすめします。
僕はタミヤのクリーニングセットやガイアのツールウォッシュ、百均の綿棒などを使って手入れしています。
3.剥がし
それではここから本番の剥がし工程に移ります。
ここまで済ませてしまえば後は剥がすだけ。楽しいチッピングタイムです。
水の浸透~剥がし
まず、水を含ませた筆で剥がしたい箇所に水を染み込ませます。

この時、染み込ませる水の量が多すぎてべちゃっとしないように注意してください。
また、一気に全体に染み込ませずに一度に剥がせる箇所にのみ染み込ませた方が失敗が減ります。
ここでヘアースプレー層に水が浸透するまで数秒~数十秒待ちます。
筆でやさしくタッチして塗膜が剥がれるのを確認したらOKです。
ここからは素手では触らないように、できれば完成後に見えなくなる部分などを持ち手にして作業を進めてください。
手で触れてしまうと余計な箇所を剥がすことになり、水を付けていなくても手から発する水分でヘアスプレー層がふやけてしまうことがあるからです。

まずは角を中心に剥がしていきます。

ピンポイントで剥がしたい場合はこのようにケガキ針などを用いて小さく傷を付け、

剥がれやすくなったところを筆で拡張していくように剥がしていきます。
筆だと傷が大きくなりすぎて違和感が出てしまうことがあるので、ケガキ針などの先端が細いものを組み合わせて使うのがおすすめです。

チッピングを施すのに効果的なポイントはとにかく角です。
窪んだ部分に傷は付きませんが、逆に出っ張った部分はチッピングを施す最適なポイントになります。
実際の乗員の動作をイメージしたりしながら、箇所によって傷の大小を作るとなおリアリティが増すでしょう。

車体ハッチ部分はこのように仕上がりました。
肉眼で確認できないほどに小さな傷も付けることができるのがこの技法の魅力です。
また、この技法は一旦染み込ませた水が乾燥したらそれ以降は剥がせなくなってしまう、ということはありません。
一旦染み込ませた水が乾いてしまっても再度水を染み込ませてやればまた剥がせるようになるので、焦らず慎重に進めることができます。
一日で一気に済ませるよりも数日かけて少しづつ進める方が結果がよくなることもあるので、どうか焦らないように。
側面部の剥がし

車体側面部は移動中にひっかき傷が付くことがあるので、定規などの直線の物をガイドにして横線を引くように剥がしていきます。

こんな感じになりました。
ケガキ針などの尖ったもので剥がす際は、筆と同じ要領で力を入れてしまうと下地塗装まで剥がしてしまうことがあるので、力を入れ過ぎないように十分注意してください。
剥がした傷が細すぎて目立たない場合は、筆で撫でて太くすると見栄えが良くなります。
平面部の剥がし

こちらは砲塔上面になります。
平面部分のチッピングは傷が大きくなり過ぎないようにすると良いです。
角に比べて平面部分は傷が付きにくい箇所になっているので、大げさに傷を付けてしまうと違和感が出てきてしまいます。
例えるなら、広い海(装甲版)に大小の島(傷)がぽつぽつ浮かんでいるくらいのイメージで施すのが理想的です。
好みによって表現の幅はあるものの、基本的に平面部分にはあまり傷は付かないということを意識していただけたらと思います。
仕上がり
最終的にこんな感じに仕上がりました。




1/1スケールに戻したときに違和感が無いように意識しつつ、見栄えも考慮して大小のメリハリを付けた仕上げにしました。
まとめ
いかがだったでしょうか。

ここで各工程のポイントをおさらいしておきます。
塗装のポイント
- 下地塗装は塗膜の強いものを使う(ラッカー塗料など)
- ヘアスプレーはムラができないように一定の距離(30cm程)から均一に二度塗りする
- 基本塗装には塗膜の弱いものを使い、塗膜が厚くならないように
- 塗膜が弱く隠蔽率の高いタミヤアクリルがおすすめ
- タミヤアクリルと希釈する水の割合は1:1
チッピングのポイント
- 水は付け過ぎない
- なるべく面相筆などの細い筆を使う
- 傷は角によく付き、窪みや平面部分にはあまり付かない
- 大小の傷をバランスよく付ける
- ひっかき傷は定規などをガイドにして付ける(力の入れ過ぎに注意)
- 平面部分の傷は大げさにならないように
- 水が乾いても再度剥がすことができるので焦らず慎重に
最後に
ヘアスプレー技法の使い方をご紹介してきました。
冒頭でも触れましたがこの技法の最大の魅力は、「手軽に」「リアルな」チッピングを施すことができるところです。
筆やスポンジ、シリコンバリヤーと様々なチッピング技法がありますが、比較的簡単な上に他の技法では不可能な小さな傷まで付けられるので、現時点ではこの技法が最強だと考えています。
ぜひお試しあれ。
それでは今回はこの辺で。
今回の内容がより良い模型製作のお役に立てたら幸いです。
最後まで閲覧していただきありがとうございます。